シリーズ おススメの一冊 【第8回】

2021.07.15 NEWS

今こそ会計制度の変革のときだ!

経営学部教授  島永 和幸

私が、経営学部の皆さんにおすすめしたい本は、コリン・メイヤー著・宮島英昭監訳・清水真人・河西卓弥訳『株式会社規範のコペルニクス的転回』東洋経済新報社、2021年刊です。

私は、財務会計論の講義を担当しています。財務会計論では、主に「会計制度」について学習します。専門用語になりますが、貸借対照表や損益計算書といった財務諸表を通じて、財政状態や経営成績といった企業の経営状況を知ることができます。ところが、近年、この会計制度だけを学習していても、企業の全体像(実像)を把握しづらくなってきています。

企業の競争優位の源泉として重視されてきている知的資産や無形資産は、会計制度の対象外となっていることが多く、「会計制度」で取り扱われている内容と、企業を取り巻くステークホルダー(利害関係者)が必要としている会計情報との間に、大きな乖離(ギャップ)が生じているからです。今後どのように会計制度を構築していくべきか、学界や実務界において活発な議論が行われています。こうした重要かつ喫緊の課題をどのようにクリアしていくのか、その処方箋が今まさに求められています。

本書では、現行の会計制度は、「企業の目的=株主価値の最大化」というフリードマン・ドクトリンに根差したものであるとされます(コリンメイヤー・宮島監訳(2021), 3、248頁)。しかしながら、伝統的な貸借対照表では、主に金融資産や有形資産が計上される一方で、人的資本や社会資本、自然資本といった資本はほとんど計上されていません(コリンメイヤー・宮島監訳(2021), 37頁)。企業は、人的資本や自然資本を活用して経済活動を営んでいます。将来における責任として持続可能な社会を目指すには、企業は、どのような責任を果たしていくべきでしょうか。本書では、会計制度の抱える課題について新たな提言が行われています。この解決策については、ぜひ本書を読んで確認してみて下さい。

島永和幸の一冊:
コリン・メイヤー著・宮島英昭監訳・清水真人・河西卓弥訳『株式会社規範のコペルニクス的転回』東洋経済新報社、2021年。