シリーズ おススメの一冊 【第6回】
自分の「チーズ」を探そう!
経営学部教授 吉田 康久
私はチーズが好きで、英国のロンドンで生活していた時には、近くのスーパーへ行って、チーズを買ってよく食べていました。ロンドンのスーパーは、店頭での量り売りが多く、自分の欲しい量だけを買うことができるのです。しかも、沢山の種類のチーズが陳列されていましたので、どれを買うかに迷うほどです。日本だと、量り売りのお店は少なく、すでにパック詰めされたものを置棚から買うことになり、種類も多くはありません。なので、日本に帰国してからは、チーズの種類を色々と楽しみながら買うことができず、残念な思いです。しかし、これは仕方がありません。国が違えば文化も違いますし、人々の行動様式も異なるからです。それぞれの国に、それぞれの良さがあります。どこの国にも、美味しいチーズはあります。私が大好きなチーズ「私の一品」は、なぜかオランダで食べた、スモークチーズです。
さて、今回、ご紹介する「私の一冊」は、『チーズはどこへ消えた?』です。この本が出版されたのは、2000年11月です。今から遡ること、20年前です。しかし、未だに、人生のヒントを得る一冊です。
本の内容を、少し紹介しておきます。
「2匹と2人は「迷路」のなかに住み、「チーズ」を探します。「チーズ」とは、私たちが人生で求めるもの、つまり、仕事、家庭、財産、健康、精神的な安定・・・等々の象徴で、
「迷路」とは、チーズを追いもとめる場所、つまり、会社、地域社会、家庭・・・等々の象徴」です。本の頁数は、100頁に満たないものですが、物語の内容は、急激な状況の変化に、いかに対応すべきかを説く、深い内容が込められています。
A.J・クローニンが、次の所説を残しています。「人生は、自由になんのじゃまものもなく、歩めるような、まっすぐで楽な廊下ではなく、通るものにとっては迷路で、自分で道をみつけねばならず、道に迷い、わけがわからなくなり、ときには袋小路につきあたることもある。しかし、信念があれば、かならずや道は開ける。思っていたような道ではないかもしれないが、やがてはよかったとわかる道が」。
本のなかでは、人々の行動パターンを例示しています。「いち早く変化をかぎつけることもあるし、すぐさま行動を起こすこともある。また、変化を認めず、変化にさからうこともあるし、うまく変化の波に乗ろうとすることもある」と。
一言でいうと、時代はいつも変化し、その変化の波にのまれます。その時、人はどう行動するかです。行動の結果によって、見つけられるチーズが違ってきます。今のチーズよりも、もっと美味しいチーズを見つけられるかもしれません。美味しいチーズは、人によって違うでしょう。しかも、チーズは、世界中にあります。
さあ、皆さん、自分の「チーズ」を探そう!
吉田康久の一冊 :
スペンサー・ジョンソン(著)・門田美鈴(訳)『チーズはどこへ消えた?』
株式会社扶桑社 2000年11月30日